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裳華房 今月の話題

ヒトゲノム解読結果公式発表

(2001.3.1)

 ヒトゲノム(ヒトの全遺伝情報)の解読を進めてきた日米欧などの国際研究チームの成果が2001年2月15日発行の英国科学雑誌『 nature 』(『nature 』日本語版サイトはこちら,ヒトゲノム記事の全文が読めます)に,同じく セレラ・ジェノミクス社の成果が2月16日発行の米国科学雑誌『 Science 』に,それぞれ掲載されました (『Science 』記事の日本語要約はこちら).

 国際チームとセレラ社はヒトゲノム解読の熾烈な競争を続けてきましたが,昨年6月に共同記者会見に臨むなど歩み寄りを見せていました.今回の公式結果発表を期に,ヒトゲノム研究はいわゆる「ポストゲノム」に向けて加速するものと思われます.国際チームによるヒトゲノムの塩基配列データは,人類共通の財産としてすでに公開されています (サイトはこちら).

 これまで,ヒトの遺伝子数は3万〜12万個とかなり幅をもってさまざまに予想されていましたが,解読結果によると約3〜4万個程度のようです.「魚でも人間でも,脊椎動物の遺伝子数はだいたい同じくらいなのではないか」との予想もあります.そうすると,脊椎動物の多様性を生み出すものは何なのか.興味はつきません.

 そういった基礎生物学的な興味もさることながら,ポストゲノム,つまりDNA塩基配列完全解読後の研究で中心となるのは,遺伝病(一つ〜少数の遺伝子が原因となる疾患)の克服,多因子病(多数の遺伝子,さらには生活習慣などさまざまな因子がからむ疾患)の治療や予防,一遺伝子多型(SNPs ;SNPsのデータベースはこちら)を解析して個人差を知りその人の体質にあった薬を創り出す「ゲノム創薬」といった医療分野でしょう(遺伝病,体質などに関するヒト遺伝子のカタログはこちら).もちろん,発生・分化のメカニズムなど基礎分野への貢献も計り知れないものがあります.2001年は「ポストゲノム元年」として記憶されるかも知れません.


・ 日本のヒトゲノム解析関連サイト:
 理化学研究所 ヒトゲノム解析グループ
 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センタ−
 大阪大学・東京大学 ボディ・マップ

・ 日本の主なゲノム研究機関:
 理化学研究所 ゲノム解析総合研究センター
 かずさDNA研究所
 日本DNAデータバンク(DDBJ)


●雑誌『生物の科学 遺伝』の主な(ヒト)ゲノム解析関連記事

▼ヒト関連

54巻11号(2000年11月号)
  【トピックス】 「あなたのサイズは… −ヒトの遺伝子はいくつあるか−
  【トピックス】 「日本が中心となったヒト21番染色体シークエンスプロジェクト

54巻10号(2000年10月号)
  【特集記事】 「ヒトゲノム解析」(『特集:現代社会と遺伝学』所載)

54巻4号(2000年4月号)
  【特集】 『ヒトの遺伝子 −ゲノム計画と21世紀の遺伝子研究−
  【トピックス】 「ヒト遺伝子解析とDNAチップ

▼ゲノム全般

53巻8号(1999年8月号)
  【特集】 『ゲノム情報からみた新しい生物学

52巻10号(1998年10月号)
  【連載】 研究室・研究所めぐり(8) 「財団法人 かずさDNA研究所


裳華房の主なヒト遺伝子関連書籍

動きだした遺伝子医療 −差し迫った倫理的問題− 【ポピュラー・サイエンス 214】

遺伝Q&A』 【ポピュラー・サイエンス 223】

遺伝子できまること、きまらぬこと 【ポピュラー・サイエンス 209】

人類遺伝学 【21世紀への遺伝学 5】

人のための遺伝学



         

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