大気の窓(Atmospheric Window)
<体験版>

電磁波は,波長の長いものから, 電波・赤外線・可視光線・紫外線・X線・ガンマ線と大まかに分類されています. 天体からやってくる電磁波の大部分は, 地球の大気を通りぬける間に吸収されてしまい, 地上の届くのはごく限られた波長域のものだけになります. 地上から宇宙を観測できる電磁波の領域を 大気の窓 (atmospheric window)と呼びます.

長波長の電波は電離層によって宇宙空間に反射されてしまいます. 約1mmから10mの波長の電波は, あまり吸収されずに大気を通過します. 1μmから約1mmまでの近赤外からミリ波領域は, 大気上層の水蒸気や二酸化炭素分子によって,かなり吸収されます. 300nmから1000nmの可視光に対しては,大気はほぼ透明です. 紫外線はオゾンなど大気中の分子に吸収されます. X線は大気中の原子に,ガンマ線は大気中の分子の原子核に吸収されます.

結局のところ,<大気の窓>としては,比較的広い窓として, 波長1mmから30m付近に開いた電波の窓と, 300nmから1000nm付近に開いた光の窓があることがわかります.

電波の領域,とくにミリ波などでの大気の透過率は, 大気中のいろいろな原子や分子による吸収などのために, 高度や季節や場所によっても異なり,非常に複雑です. 参考までに,国立天文台が計画している次期電波望遠鏡LMSAの建設予定地である, チリ北部のアタカマ高原(標高5000m)で測定した, サブミリ波領域での大気の透過スペクトルを, 同定された分子スペクトル線と共に下に示します. 350GHz,500GHz,650GHz,850GHzなどに, サブミリ波大気の窓が確認され,アタカマ高原では、 大気透明度の高い条件でサブミリ波観測ができることが明らかにされました. また、1THz以上の遠赤外線領域においても観測可能な窓が見つかり, より高周波での観測可能性も示唆されました.


資料提供:松尾 宏(国立天文台)

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