オリオン座の巨大分子雲
(Orion Giant Molecular Cloud)


オリオン星雲
トラペジウム
M42はオリオン座の小三つ星の真ん中の星(トラペジウム) のまわりに広がる電離水素領域(HII領域)です.

M42/NGC1976-7
赤経05h35m
赤緯-05°27′
視直径35′
距離1500光年

資料提供:大阪教育大学

トラペジウムの星は生まれたばかりのO型星が4つ集まったもので (4つまとめてθ1Oriと呼ばれています), 非常に高温なため,周囲の空間に強い紫外線を放出しています. この4つの星の中でθ1Ori Cがオリオン星雲の励起星で, その紫外線を受けてまわりのガスが電離し, 水素の輝線などで光って見えます.
このような若い星のまわりの電離ガスのかたまりは,電離水素領域, または,電離した水素をHIIと呼ぶことから, HII領域(HII region)とも呼ばれています.

一酸化炭素分子(12CO(J=2-1)) で見たオリオン座

ここに示したのは,有名な星座の1つであるオリオン座です. 左は,可視光でみたオリオン座です. 中央に,横に3つ並んだのが3つ星で,左上の明るい星がベテルギウス, 右下の青白い星がリゲルです.

右は,この写真の上に, 東京大学-野辺山電波観測所の60cm電波望遠鏡VST1を使って, 一酸化炭素分子(CO)の出す1.3mm(J=2-1)のスペクトル線で見た様子を重ねて示したものです. 電波画像の色は,電波輝線の強度に応じてつけられていて, 赤が一番強度が強く,青になるほど強度が弱いことを示しています. ここには巨大分子雲と呼ばれる太陽の約10万倍もの質量を持つ星間ガス雲が2つ あることがわかります.

南側(図の下側)の分子雲をオリオン座A分子雲, 3つ星の一番東(左)から上にのびているのをオリオン座B分子雲と呼びます.

オリオン座A分子雲の中で一番電波の強いところには, 有名なオリオン星雲(M42)があり,今まさに星が活発に生まれています. 電波で観測してみると,オリオン座の分子ガスは, 大きな広がり(数十光年)を持っており,オリオン星雲は, その端にある小さな天体に過ぎないことがわかります. これらの分子雲は,星が生まれるもととなったと考えられています.

オリオン座巨大分子雲の一酸化炭素輝線強度比

資料提供:阪本成一(国立天文台 野辺山宇宙電波観測所)

一酸化炭素分子(13CO(J=1-0))で見たオリオン座Aの分子雲

この図は,オリオン座A分子雲に対して, 名古屋大学の4m電波望遠鏡を用いて, 炭素の同位体13Cを含む一酸化炭素分子13CO(J=1-0) の電波で観測した結果です. 銀河座標で示してあるため,分子雲は横長の向きになっています. 分子雲は,銀河面と平行に150光年以上にわたって細長く伸びているのが図よりわかります. さらに,周辺の比較的密度のうすいガスの分布も明らかになりました. 一番南(左)側は,まるで魚のしっぽのような2つに割れた形をしています.

分子雲中には生まれたばかりの若い星がたくさんあり, 今もなお新しい星が生まれつつあります.

資料提供:長浜智生(名古屋大学)

サブミリ波で見たオリオン座A分子雲

富士山頂サブミリ波望遠鏡で得られた, オリオン座A分子雲の中性炭素原子輝線(CI)積分強度図(速度範囲 3-13km/s)です. 色は電波輝線強度に応じてつけてあり, その関係が図の左側に示してあります.

私たちから最も近い,典型的な巨大分子雲であるオリオン座A分子雲に対して, そのほぼ全領域,9平方度に対して3′グリッドでCI(492 GHz), CO(J=3-2, 345 GHz)の同時観測を富士山頂サブミリ波望遠鏡で行いました. その結果,CIは分子雲全体にわたって広がっていることが初めて明らかになりました. CO(J=3-2)は光学的に厚く,分子雲全体の温度環境をトレースしています. CIの分布はCO(J=1-0)と良い相関を示し, 標準的な光解離領域の性格をよく反映していることが明らかになりました.

資料提供:池田正史(東京大学)

一硫化炭素分子で見たオリオン座A分子雲

資料提供:立松健一(国立天文台 野辺山宇宙電波観測所)

これは国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡でとった, オリオン座A分子雲の一硫化炭素分子CS(J=1-0)49GHzの分布図です. 13COで見たよりもさらに密度の高い (水素分子密度が1cm3あたり1〜10万個程度)領域を見ています.

オリオン座A分子雲の細長い中に,小さな分子雲の塊がたくさんあることがわかります. 空間分布や速度分布をもとに調べたところ, この中には約100個の分子ガスの塊があることがわかりました. 星はこのような密度の高まったところ(分子雲コア)からできます.

この観測は,重たい星を作る巨大分子雲中の分子雲コアの最初のサーベイ観測結果です.

オリオン座A分子雲の階層構造

オリオン座分子雲L1641

オリオン座分子雲L1641の詳細な構造
L1641とは暗黒星雲についてのリーンスのカタログ番号名で, オリオン座A分子雲の一部を表します. 上の等高線図は, Maddalenaらによるオリオン座A分子雲の12CO(J=1-0)輝線の観測結果です (Maddalena et al. 1986). 口径1.2mのハーヴァード・スミソニアン・ミニ電波望遠鏡で観測したもので, あまり細かいところは見えていません(角度分解能約8分角). その中心部分,細長い四角形で囲った領域を, 国立天文台野辺山45m電波望遠鏡で12CO(J=1-0)輝線で観測しました. 観測点の間隔は34秒角で,非常に細かい構造がよく見えています.

上の(a)は全ての視線速度にわたって電波輝線強度を加えた積分強度図で, ガス雲の量を表しているのに対して, (b) は,同じ場所のスペクトル輝線のピーク輝線温度のマップです.

詳しい説明

資料提供:阪本成一(国立天文台 野辺山宇宙電波観測所)

連続波で見たオリオン座A電波源

オリオン星雲を国立天文台野辺山45m電波望遠鏡を用いて, 周波数46GHz(波長6.5mm)の電波連続波で観測した結果です.

資料提供:赤羽賢司(松商学園短期大学)
Akabane et al. 1985, PASJ 37, 123

オリオン星雲は,電離水素領域なので,そこにある自由電子から電波が放射されています. 太陽系に比較的近い電離水素領域なので,強い電波源として古くから認識されており, オリオン座で最強の電波連続波源として,「オリオン座A」と呼ばれることもあります. 12′×12′の範囲を電波強度に応じた等高線で示してあります. 図中のBEAMと付記された円が分解能を示します.

同じ領域の可視光の写真と比べてみると, 電波を放射している領域が星雲として光っている領域とほぼ一致していることが分かりますが, 詳細に比較してみると, 可視光は星間塵によって減光されている部分でも,電波ではちゃんと見えていることが分かります. 電波強度を詳細に測ることによって, 電離水素領域の状態やそれを光らせている恒星の紫外線強度などを知ることができます. 図の中心付近の電波が一番強いところは, トラペジウムのθ1Oriと一致していて, この星がオリオン星雲を光らせていることもはっきりとわかります.

近赤外線で見たオリオン星雲

オリオン星雲 M42 オリオン座KL領域
図は,すばる望遠鏡の近赤外線カメラ(CISCO)で撮影された, オリオン星雲M42(左)とオリオン座KL領域(右)です. Jバンド,K´バンド(2.15μm), 2.12μm狭帯域フィルタ(水素分子線用)で撮った3枚の画像を重ねたものです. 青がJバンド,緑がK´バンド,赤が水素分子のバンドを示しています. 視野は,4.4′×4.8′で,中央に見えている白く明るい星が, トラペジウムの星々です. また,その周囲の分子雲にうもれた生まれたばかりの星たちも見えてきました. 写真の右上には水素分子輝線で輝く星雲が見えます.

右に,左の右上部分を,水素分子のバンドのみの図で示します. この中心付近は,オリオン座クライマン・ロー(KL)星雲と呼ばれています. 中心には,IRc2と呼ばれる太陽の30倍の質量を持った星が生まれようとしています. この,生まれたばかりの星の激しい活動が, 近赤外線で見えたような,まるで吹き出したような星雲を作っています.

資料提供:国立天文台 ハワイ観測所/すばるHPより


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