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裳華房 今月の話題

ニュートリノ質量検証

(2003.1.15更新)

 昨年,小柴昌俊先生(東大名誉教授)のノーベル物理学賞の受賞により,世間でも一躍脚光を浴びた「ニュートリノ」.近年,このニュートリノに関する研究の大きな課題の一つは,ニュートリノの質量の存在についてでした.
 ノーベル賞の授賞式を目前に控えた2002年12月6日,東北大教授・鈴木厚人先生(小柴先生の教授時代の助手)の研究グループは,“ニュートリノは99%以上の確率で質量をもつ”と発表しました.鈴木先生は,今回行ったこのニュートリノ質量検証の研究により100%ニュートリノが質量をもつことを示すデータがまもなく得られることを確信している,ということです.

 ニュートリノの質量を検証するということは,「ニュートリノ振動」と呼ばれる現象を確認することです.
 これは,ニュートリノにある3種類の型(電子型,タウ型,ミュー型)のうち,あるニュートリノが別の型に姿を変えることをいいます.長距離を飛行する間にたびたび繰り返されるため,“振動”という言葉がつけられています.
 ニュートリノの型と質量とは固有に決まっているものではなく,それらが一致しない場合,一般にはニュートリノの重ね合せの状態とみることができ,これは時間とともに変化しています.そのときの状態はそのニュートリノの質量と型によって決まっているので,この状態の変化,つまりニュートリノ振動を確認することにより質量が検証できるということになります.

 そもそもニュートリノの質量については,1998年に東大教授・戸塚洋二先生(現 高エネルギー加速器研究機構教授)の研究グループが世界で初めてその存在を発見し,その後これを裏付ける質量検証の研究が各国で進められてきました.
 戸塚先生のグループは,ミュー型がタウ型に変るニュートリノ振動をスーパーカミオカンデによって観測しましたが,今回の鈴木先生のグループでは「カムランド」と呼ばれる装置を用いて反電子型のニュートリノの欠損の観測に成功しました.カムランドは,スーパーカミオカンデで大量の水を使用するのに対し,ニュートリノと陽子の衝突時の発光量が水よりも多い「液体シンチレーター」を用いることで,ニュートリノを検出します.それによって,より低エネルギーのニュートリノも捕らえられるしくみになっています.
 カムランドから得られる高い精度のデータから,ニュートリノ質量検証の研究もまた一歩前進することができるようになりました.
(カムランドについては,2002年2月の今月の話題“ニュートリノ観測装置「カムランド”で取り上げています.)

 一昨年の秋,初の補修工事に伴って起きた事故により実験を中断していたスーパーカミオカンデも,昨年の12月に復旧しました.この修復工事では,今後の事故による装置の破損を最小限に抑えること,さらに今回の事故がこれからの観測に影響を及ぼさないようにすることを想定し,1年半にわたって作業が行われました.スパーカミオカンデの今後の課題としては,観測の事象数を増やしデータの精度を上げることによって,ニュートリノ振動についてのより詳細な情報を得ることです.
 スーパーカミオカンデの研究成果は,高エネルギー加速器研究機構のページで随時報告されています.


●関連リンク

 ○KamLAND
  (カムランドの研究成果を報告)

 ○Super-Kamiokande
  (東京大学 宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設のページ)

●弊社関連書籍

 ○『21世紀,物理はどう変わるか』
   日本物理学会 編/274頁/定価4620円(本体4200円+税10%)

 



         

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