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今月の話題

遺伝子組換えサルの誕生

(2001.2.1)

 米国オレゴン健康科学大学霊長類研究所のグループが,蛍光タンパク質(GFP)をつくるクラゲの遺伝子を組み込んだサルを誕生させることに成功しました.詳細は1月12日発行のサイエンスに発表されています.(日本語抄訳サイト

 蛍光タンパク質遺伝子を組み込んだトランスジェニック動物というと,蚕糸・昆虫農業技術研究所のスタッフがつくった「光るカイコ」が有名です.遺伝子組換え実験に蛍光タンパク質の遺伝子が使用されるのは,生まれた生物が“光る”ことによって組み込んだ遺伝子が発現していることが明確にわかるためで,蚕昆研の遺伝子組換えカイコは実際蛍光を発しています.今回誕生したサル(アカゲザル)は,PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法;DNAを増幅する方法)をもちいた分析により爪や体毛,胎盤に蛍光性がみられたとされていますが,「組み込まれた遺伝子の量が少ないためか皮膚や毛が光ることはないという」(朝日新聞;2001.1.12)との由.ということは,充分な量の遺伝子を組み込めば蛍光サルも誕生する?

 今回の成果の意義は,なんといってもヒトにごく近縁な動物で遺伝子組換えの成立が実証されたことで,人間の病気の原因になる遺伝子を組み込んだサルをつくることができれば,治療法を開発するための実験動物に使えると,研究スタッフは指摘しているそうです.今後の動向が注目されます.


<遺伝子組換え・遺伝子治療に関連する裳華房の書籍・雑誌>

・バイオテクノロジー全般に関するもの

『バイオの扉 −医薬・食品・環境など32のトピックス』
斎藤日向 監修 森 明彦 編集代表  定価2860円(本体2600円+税10%)

『分子生物学とバイオテクノロジー』
山口彦之 著  定価4730円(本体4300円+税10%)

『バイオテクノロジーノート』
山口彦之 著  定価2640円(本体2400円+税10%)

『ライフサイエンスのための分子生物学入門』
駒野 徹・酒井 裕 著  定価3080円(本体2800円+税10%)


・遺伝子組換えに関するもの

雑誌『生物の科学 遺伝』2000年3月号(54巻3号)
吉本和夫「高校と大学の共同授業の試み −高校生に大学で遺伝子クローニングを実体験させてみた」(特集・新学習指導要領と曲がり角の生物教育)

雑誌『生物の科学 遺伝』2000年10月号(54巻10号)
鎌田 博「遺伝子組換え植物の現状と未来 −安全性の確保と社会的受容」(特集・現代社会と遺伝学)

雑誌『生物の科学 遺伝』2001年11月号(55巻6号)(予定)
「特集・遺伝子組換え作物(仮題)」


・遺伝子治療に関するもの

『動きだした遺伝子治療』(ポピュラー・サイエンス 214)
松田一郎 著  定価1540円(本体1400円+税10%)

『人類遺伝学』(21世紀への遺伝学 5)
今村 孝 編  定価3740円(本体3400円+税10%)

『遺伝 Q&A』(ポピュラー・サイエンス 223)
中込弥男 著  定価1760円(本体1600円+税10%)

雑誌『生物の科学 遺伝』2000年4月号(54巻4号)
「特集・ヒトの遺伝子 −ゲノム計画と21世紀の遺伝子研究」

雑誌『生物の科学 遺伝』2000年10月号(54巻10号)
松田一郎「遺伝子医療への招待」(特集・現代社会と遺伝学)




         

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