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【裳華房】 メールマガジン「Shokabo-News」連載コラム 
裳華房の“古書”探訪(20)

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日本鳥学会誌 『鳥』2号〜21号 [大正4年〜大正15年]

 今回は、書籍(単行本)ではなく雑誌(学会誌)をご紹介します。日本鳥学会の学会誌『鳥』です。

 筆者が、創刊当時の学会誌『鳥』が裳華房から発売されていたことを最初に知ったのは、2001年秋に翌年刊行予定であった『これからの鳥類学』の打ち合わせのために、当時京都大学教授であった山岸哲先生の研究室にお伺いした際でした。
 この『これからの鳥類学』は、2002年に日本鳥学会創立90周年記念出版として刊行されましたので(現在品切れ中)、学会との古い縁があったことにビックリしました。

 日本における鳥類分野の唯一の学会である日本鳥学会は、明治45年(1912)5月3日、東京・神田の学士会館に参集した7名によって創立されました。初代会頭(現在の会長)は東京帝国大学理科大学(現在の東京大学理学部)動物学教室の飯島魁教授。
 3年後の大正4年(1915)5月26日に、会誌『鳥(Tori)』が創刊されました。誌名の『鳥』は飯島会頭が自ら決められたとのこと。初代の編集長は幹事の内田清之助氏、2代目の編集長は黒田長礼氏。

 発行は当然ながら「日本鳥學會」ですが、発売所は1号が丸善書店と東京堂書店、2号より裳華房と東京堂書店、5号より裳華房のみが発売所となり、大正15年5月発行の21号まで続きました(22号より発行・発売ともに日本鳥学会)。

 裳華房が発売所になった経緯などは不明ですが、学会創立と同じ年にあたる大正元年に、裳華房からは、内田清之助氏が所属していた農商務省農務局編『海産保護鳥類圖説』や、黒田長礼著『世界の鴨』『世界の雁と鵠』(いずれも日本鳥類学会臨時刊行物)などを刊行していますので、その縁によるものかもしれません。
 大正6年には第2代会頭の鷹司信輔著『飼ひ鳥』、また内田清之助著『鳥類講話』なども出版。大正11年には、学会創立10周年を記念して出版された『日本鳥類目録』(上製100部、並製300部の限定出版)も裳華房から販売されました。

 『鳥』の1号から1986年の第34巻4号(次号より『日本鳥学会誌』と改名)までの全号は、日本鳥学会のWebサイトにてPDFとして公開されているため、
http://ornithology.jp/cgi-bin/osj/jjo/content.cgi#tori_top
ここでは特に創刊当時の記事の紹介などはしませんが、本文は縦書きで組まれ(昭和5年の30号まで)、また当初は種名を平仮名で表記していたことなどが大きな特徴といえるかと思います。

 1994年には、第二次世界大戦前に発行された1号から55号(1〜11巻)までがアテネ書房より復刻版(「復刻『鳥』」全11巻・別巻1)として刊行されました。(今回の執筆にあたり、奥付などの確認はこの復刻版を参照しています)

 復刻版刊行に尽力された山岸哲日本鳥学会会長(当時)は、別巻に収められた「『鳥』の復刻にあたって」の中で、次のように述べています。

先に述べた日本鳥学会発足時の中心人物3氏(引用者注:内田清之助、鷹司信輔、黒田長礼)の興味は、少しずつ異なっていたようで、これがその後のわが国の鳥学をバランスよく発展させていったひとつの要因ではなかったろうか。
すなわち、その後、内田氏は農林省で経済的利用保護の分野で業績をあげたのに対し、鷹司氏は鳥の飼育に特別の興味を示し、(中略)黒田長礼氏は、まさに鳥学の本道である科学的研究(主に分類学や生態学)に半生を捧げ、今回の復刻版にみるように、「鳥」に膨大な数の論文を投稿し、日本の鳥学の牽引車となった。

 裳華房は、学会誌『鳥』の発売だけでなく、ここに述べられた3氏の著書も(上述したように)数多く刊行しておりますので、(初期の)日本の鳥学の発展にいささかなりとも寄与しえたのではないかと思います。

 なお、明治時代後期には、裳華房からは日本動物学会『動物學雑誌』および日本植物学会『植物學雑誌』も発売しておりましたので、これらも機会があればご紹介したいと思います。


『鳥』 2号(大正4年12月)〜21号(大正15年5月)
   日本鳥学会 発行/裳華房 発売/菊判


※本稿を執筆するにあたり、日本鳥学会のWebサイト、および「復刻『鳥』」等を参考にさせていただきました。誠にありがとうございました。

☆記述の誤りなど,お気づきの点がありましたら m-list@shokabo.co.jp まで御連絡ください.


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