星の進化(Stellar Evolution)

ここでは,星の進化に沿った天体の用語をまとめてあります.

原始星
おうし座T型星
主系列星
赤色巨星
進化の最終段階
惑星状星雲
白色矮星
超新星
中性子星
ブラックホール


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◇原始星(Protostar)

星間ガスが重力的に収縮して一つの星として輝きだした天体, すなわち誕生したばかりの星を原始星(protostar)といいます. できたばかりの原始星の中心温度は10万K程度にすぎないので, 核融合反応は起こっていませんが,ガスが収縮する際に, 重力エネルギーが解放されて,明るく輝くことができます. 実際,太陽質量程度の原始星の場合,できたばかりでは, 表面の温度は6000Kほどですが,半径は太陽の100倍近くもあるので, 光度は太陽の1000倍から10000倍にも達します. 原始星は少しずつ重力収縮して,中心の温度を上げていき, やがて主系列星にいたります.

若い星の進化過程は,赤外線から可視光領域でのスペクトルの特徴から, クラスIからクラスIVまで4つの段階にわけられています.

Class I

クラスIの段階では, 新たに生まれた原始星は濃いガスに取り囲まれていて, 周囲のガスは依然として中心の原始星へ降り積もっている最中です. 濃いガスのために中心の原始星は見えませんが, ガスに含まれるダストからの赤外線放射のために, 連続スペクトルは遠赤外線領域にピークをもつものになります. またこの段階では,しばしば, 双極分子流(bipolar molecular flows)と呼ばれる, 2つの方向に絞られたガス流が観測されます.

Class II

クラスIIの段階では, 周辺のガスとダストの量が (一部は原始星に降着し,一部は双極ジェットとして放出されて)減少し, 中心の天体は古典的Tタウリ星(classical T-Tauri star; CTTS) として観測されます. ガス/ダストの量はまだかなり多く, 星からの放射と同程度の赤外線がダストから放射されます. その結果,1ミクロンから100ミクロンにかけては, 特徴的な平坦なスペクトルになっています.

Class III

クラスIIIの段階では,ガスの量はさらに減るので, 連続スペクトルは, 星からのスペクトルが赤外放射で少し変形されたものになります. この段階は,弱輝線Tタウリ星(weak-line T-Tauri star; WTTS) として観測されます.

Class IV

クラスIVの段階では, 原始星周辺のガス雲(原始惑星系ガス円盤)は消失し, スペクトルは中心星のスペクトルそのものになります. そして, 0歳主系列星(zero-age main sequence star; ZAMS)が誕生します.


オリオン大星雲M42

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◇おうし座T型星(T Tauri Star)

おうし座T型星/Tタウリ星(T Tauri star)は, 主系列星の前の進化段階の若い星で, おうし座分子雲のような星形成領域に分布しています. Tタウリ星の段階では,原始星と同じく, 星の中心での核融合はまだ起こっていなくて, 重力エネルギーの解放によって光っています.

Tタウリ星のスペクトル的な特徴は, 赤外放射が強いことと,多くのスペクトル線をもつことです. とくに,Hαの輝線とLiの吸収線が存在することが, Tタウリ星の定義になっています. また,Hαの輝線が強くて等価幅が10Åより広いものを 古典的Tタウリ星(classical T-Tauri star), Hα輝線が弱くて等価幅が10Åより狭いものを 弱輝線Tタウリ星(weak-line T-Tauri star)と亜分類します. これらの輝線は, 中心星と中心星を取り巻くガス円盤の境界付近から 放射されていると考えられています.

Liは,宇宙誕生時のビッグバンで生成され, その後宇宙空間を漂っていたものが, 星が作られるときに取り込まれたものだと考えられます. しかし,星の内部では,Liは生成されることはなく, 次第に壊されていきます. したがって,星のスペクトルでLiの吸収線が存在するということは, その星の年齢が若いということを意味しています.
さらに,Tタウリ星では,OIIIのような禁制線もしばしば観測されますが, これらは星本体から吹き出している高温で低密度の星風から 放射されたものだと考えられています.

原始星(クラスI),古典的Tタウリ星(クラスII), 弱輝線Tタウリ星(クラスIII)などの段階では, 原始惑星系円盤(protoplanetary disk)が存在します. 古典的Tタウリ星や弱輝線Tタウリ星の周りのガス円盤は, 典型的には,100天文単位ぐらいの広がりがあり, 太陽の1/1000から1/2ぐらいの質量をもっています.

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◇主系列星(Main Sequence Star)

原始星が重力収縮して中心の温度が高くなり,約1000万度程度になると, 水素がヘリウムに転換する核融合反応が始まります. この水素の核融合反応はきわめて安定していて, 中心部の水素がヘリウムになってしまうまで, 何億年も続きます. この状態の星が主系列星(main sequence)です. 星はその一生の大部分の時間を主系列星として過ごします. また,星が生まれてから主系列星にいたるまでは, HR図上で大きく移動しますが,主系列星になってからは, (水素の核融合反応が非常に安定しているために) HR図上のほぼ一定の場所に落ち着きます.


プレアデス星団

主系列星の半径や表面温度,光度,内部構造,寿命などの物理量は, その質量だけでほぼ決まります.

主系列星の物理量
質量 M
(太陽質量)
半径 R
(太陽半径)
表面温度
(K)
光度 L
(太陽光度)
中心密度
(g/cm3)
中心温度
(K)
寿命
(年)
10014 520001.2×106 1.64.2×107500万
509.2 440003.2×105 2.54.0×107650万
205.7 340003.7×104 4.63.5×1071100万
103.8 240004700 9.03.1×1072900万
52.6 17000450 212.7×1071億1千万
21.5 9200150 662.1×10715億
10.98 54000.71 871.4×107110億
0.70.62 45000.14 861.1×107530億
0.50.44 38000.04 850.89×1071800億

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◇赤色巨星(Red Giant)

主系列星の段階では,水素がヘリウムに変換する核融合反応は, 星の中心部(半径にして1割−2割くらいの領域)で起こっています. やがて中心部の水素が燃え尽きてしまうと, 中心部では水素燃焼はストップし, 水素の燃焼領域は中心部のまわりの殻状の領域に移ります. この段階に至ると, 水素の燃えた灰であるヘリウムのたまったヘリウムコアと, 水素がまだ燃えてヘリウムになっている水素燃焼殻, そして主に水素からなる外層は,それぞれ別々に変化していきます.

(1)ヘリウムコア…重力収縮
コアが形成された段階では,コアの温度は〜107.5K程度で, ヘリウムはまだ燃えません (ヘリウムが核融合反応を起こすのは108K程度). すなわちコアにはエネルギー源がなく,相対的に圧力が低下するため, 原始星と同じように,コアは重力収縮します.

(2)水素燃焼殻…“不動”
水素が燃焼してヘリウムに変換し続けている領域(水素燃焼殻)の位置は, ほとんど変わりません. 水素燃焼殻で発生するエネルギーもあまり変わらないため, 光度もほぼ一定に保たれ,その結果, 主系列星から離れて赤色巨星に進む段階では, HR図上をほぼ水平(光度一定)に進みます.

(3)水素外層…<膨張>
核反応の起こっていない主として水素からなる水素外層は, ヘリウムコアが収縮するのに伴い,力学的なバランスをとるために, 膨張していきます. 外層が膨張して半径が大きくなっても(巨星化), 光度がほぼ一定に保たれるため, 表面温度は低くなります(赤くなる). すなわち星は赤色巨星(red giant)になるのです.

赤色巨星の例:
オリオン座α星ベテルギウス(Betelgeuse):0等,M1I
さそり座α星アンタレス(Antares):0等,M1I

赤色巨星のモデル(太陽質量の7倍の場合)
物理量ヘリウムコア水素外層
半径[太陽半径]0.2140
質量[太陽質量]0.2×70.8×7
密度[g/cm3103 10-5 - 3×10-6

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◇進化の最終段階(Final Stage)

主系列星の構造や寿命などが星の質量によって決まっていたように, 星の進化も質量によって決まっています. とくに星の進化の最後の段階−星の終末−は, その質量 M によって大きく異なります.

(1)M ≦ 0.08太陽質量
生まれたときの質量が小さ過ぎると, 中心の温度が核反応が起こる温度(〜107K)に達する前に, 収縮が止まってしまい,主系列星になれません. 収縮に伴って解放された重力エネルギーが, “星”の外部にすべて放出されてしまうと, 星は,冷えて暗い天体−黒色矮星−となります. 木星は,このような太陽に成り損ねた星と考えられています.

(2)0.08太陽質量 ≦ M ≦ 0.46太陽質量
生まれた後に中心部の温度が上昇し数千万度になると, 水素に火が付いて核融合反応が始まります. 水素がヘリウムに変換されるにつれ, 中心部にヘリウムが溜っていき, やがて水素の外層は膨張して赤色巨星となります. 上の質量の範囲では,ヘリウムに火が付く(〜108K)前に, 水素が燃え尽きてしまい,核反応はそれ以上進みません. 水素の外層がなくなると, ほとんどヘリウムでできた白色矮星−ヘリウム白色矮星−が残ります. ただし質量の小さい星の寿命は現在の宇宙年齢より長いので, このようなヘリウム白色矮星はまだ存在していません.

(3)0.46太陽質量 ≦ M ≦ 4太陽質量
外層の水素が燃え尽きる前に, 中心部のヘリウムの灰に火が付き(〜108K), 今度はヘリウムが新たな燃料となって, 炭素Cや酸素Oの灰を作るという,次の段階の核融合反応が始まります. この質量範囲では炭素や酸素には火が付きません. ヘリウム燃焼殻が出きた段階で(水素燃焼殻のときのように), ふたたび赤色巨星化します. この赤色巨星段階で, 外層大気をゆっくりと放出して惑星状星雲を形成します. 一方,炭素と酸素が大部分のコアは白色矮星になります. これはわれわれの太陽の運命でもあります.

(4)4太陽質量 ≦ M ≦ 8太陽質量
中心の温度が8×108Kほどに上昇すると, 炭素と酸素の灰に火が付きます. このときC+Oコアの質量は,1.4太陽質量程度です. 水素やヘリウムの燃焼ではコアの中心で火が付くと, コアが膨張して温度が下がりますが,C+Oの場合は, それらの核反応と異なり,コアの質量や密度が大きいため, C+Oコアの中心で火がついてもコアは膨張しません. そのためコアの温度はどんどん上昇し,核反応の暴走が起きます. そしてコアの炭素や酸素は,わずか0.1秒程度で一気に燃え尽きてしまいます. またコアの温度は1010Kぐらいまで上昇し, コアは火の玉となります. その結果,星全体を吹き飛ばす超新星爆発が起こります.

(5) 8太陽質量 ≦ M
さらに質量が大きい場合も,最終的に, やはり超新星爆発を起こして星は吹き飛びます. ただし,星全体が吹き飛んでしまうのではなく, その中心核は,中性子星やブラックホールになると考えられています.

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◇惑星状星雲(Planetary Nebula)

質量が太陽の4倍より軽い星の場合, ヘリウム核融合によって生成された炭素や酸素が中心部にたまると, 星は膨らみ,外層大気が星間空間に流出します. これが惑星状星雲(planetary nebula)です.


こと座リング星雲

惑星状星雲の大きさは1光年程度で, 中心星(白色矮星)から放射される紫外線で星雲中のガスが電離され, ガス中に含まれる元素に特有の輝線を放射します. 分解能の悪い望遠鏡では,丸い形をした惑星のように見えたため, “惑星状星雲”と名付けられましたが, もちろん惑星とはまったく別物です. なお,従来は,惑星状星雲は, 球状あるいは球殻状をしていると思われていましたが, 最近の研究ではむしろ,砂時計状のようないびつな形をしているようです. このことは,星の進化の最後の段階での質量放出が, 球対称ではなく2方向に双極流的に起こることを示唆しています.

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◇白色矮星(White Dwarf)

電子のような素粒子を(空間的/速度的に)狭いところに詰め込むと, “縮退圧”と呼ばれる量子力学的な反発力を示すようになります. 太陽質量の4倍ぐらいより軽い星の場合で,赤色巨星になった後, その芯が炭素や酸素の燃えかすだけとなり, 温度も数万度に下がって,収縮し, 電子の縮退圧で自分自身の重力を支えるようになった星が, 白色矮星(white dwarf)です.


白色矮星の模式絵

白色矮星の質量は太陽程度ですが,半径は地球程度しかありません. そのため,白色矮星の平均密度は太陽の約100万倍, 1cm3あたり1.4トンにもなります. 表面温度は1万Kもありますが,表面積が小さいので, 太陽の1万分の1くらいの明るさしかありません.
白色矮星を支えている電子の縮退圧には限界があるため, 太陽の約1.4倍より重い白色矮星は存在できません. もし軽い白色矮星にガスが降り積もって,その限界を超えたとすると, 白色矮星の中心部では核反応の暴走が起こり, 超新星(タイプIa)になります.

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◇超新星(Supernova)

比較的重い星の場合,進化の最後の段階で核反応の暴走を起こし, 星全体が大爆発することがあります. これが超新星(supernova)です. またその爆発自体を超新星爆発(supernova explosion), 爆発の後に残されるガスの名残を超新星残骸(supernova remnant) と呼びます.


超新星1995D

分光学的には,超新星は, 水素のスペクトル線の検出されないI型(type I)と, 水素スペクトル線の見えるII型(type II)に大きく分けられます.
一方,超新星爆発のメカニズムも大きく2種類あります. まず,太陽の4〜8倍の質量の星の場合,炭素と酸素の中心核が収縮した後, 約8億度に達した段階で炭素に核融合の火がつき, どんどん重い元素ができていきます. この炭素の核融合は,たった0.1秒程度で暴走し, その結果,星はコナゴナに砕けてしまいます. これが炭素爆燃型超新星です. さらに重い,太陽の約8倍より重い星の場合, 核反応は一気に鉄まで進んでしまいますが, せっかくできた鉄は,まわり中からエネルギー(ガンマ線光子)を吸収して, ヘリウムと中性子に分解してしまいます. これを鉄の光分解と呼びますが, この鉄の光分解は吸熱反応で,しかもほんの0.1秒くらいしかかからないので, その結果,中心核の圧力が一挙に下がって中心核は潰れ, 逆に外層は反動で飛び散ります. これが鉄の光分解型超新星です.
非常におおざっぱには, 炭素爆燃型超新星が観測的にはI型に対応し, 鉄光分解型超新星がII型に相当すると考えられていますが, いろいろなバリエーションや違いがあり, 完全に解明されているわけではありません.


超新星残骸SN1006のX線画像

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◇中性子星(Neutron Star)

白色矮星における電子の代わりに, 中性子同士の強い反発力(縮退圧)で強烈な重力を支えている星が, 中性子星(neutron star)です.


中性子星の模式絵

太陽の4倍から8倍くらいの質量の星の場合は, 超新星爆発の後に何も残りませんが, 8倍から数十倍の質量の範囲では, 超新星爆発の後に中性子星が残ります. もとの星の質量は太陽の何十倍もあっても, 大部分は星間空間に飛び散ってしまい, 残された中性子星の質量は太陽程度になります. しかし中性子星の半径はわずか10kmほどしかないため, 平均密度は1cm3あたり実に5億トンにもなります. これはほぼ原子核の密度で,いわば中性子星全体が, 中性子が隙間なく詰まった巨大な原子核のようなものです.

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◇ブラックホール(Black Hole)

ブラックホールほど人口に膾炙した学術用語はありませんが, その実体は案外と誤解されているようです. たとえば,ブラックホールが何でも吸い込むといっても, それはごくそばまで行った場合の話で, 遠方ではふつうの星の重力作用と変わりません. 実際,太陽を同じ質量のブラックホールに置き換えても, 地球の運動には何の変化も起こりません.
通常,ブラックホール(black hole)は, 大質量星がその一生を終えて超新星爆発を起こしたときに形成されます. すなわち,超新星爆発の際, 非常に高密度になった中心核の質量が太陽の数倍を越えると, 縮退圧その他いかなる圧力によっても自分自身の重力を支えることができなくなり, 中心に向かって無限に崩壊してしまいます. この重力崩壊(gravitational collapse)の結果できた天体が, ブラックホールと呼ばれる代物です. (このような“普通の”ブラックホール以外にも, マイクロブラックホールとか超巨大なブラックホールと呼ばれるものがあります.)


ブラックホールの模式絵

ブラックホールの概念は, ニュートン力学では脱出速度を用いて説明されます. まず,天体の表面から,ある速度で物体を打ち上げたとします. 打ち上げ速度が小さいと物体は落ちてきますが,十分な速度を与えれば, 物体は天体の重力を振り切って無限の彼方へ飛び出していきます. このときの速度を,その天体の脱出速度(escape velocity)と呼びます. たとえば,地球の脱出速度は,秒速11.2kmです.
ところで,天体の質量が大きいほど,また同じ質量なら, 天体の半径が小さいほど,天体の表面での重力は強くなります. そこでもし,天体の質量が非常に大きいか,あるいは天体が非常に小さいと, その天体の脱出速度は光速を越えてしまうでしょう. すなわち光でさえ, その表面から脱出できないような天体を思い浮かべることができます. これがニュートン力学が描くブラックホールのイメージです. しかし,光は質量をもたないので,このイメージは正確ではありません.

ブラックホールはアインシュタインの一般相対論 (general relativity)を用いて,はじめて正しく記述することができます. アインシュタインの一般相対論では,重力の法則は, 時空のゆがみという空間の幾何学に置き換えて考えられるようになりました. 重力が強いというのは,つまり,時空の曲がりが大きいことです. 光は,2点間の最短距離の経路を進むのですが (というより,最短距離の経路を進むものを“光”と定義します), 一般相対論では重力のある所では空間が曲がっているので, 光の軌跡も曲がります. これは,船舶や航空機の最短航路(大圏航路)が, 地球表面という球面の上では曲線になるのと同じです.
天体の質量が大きくなるか,あるいは半径が小さくなると, 空間の曲がりもどんどん大きくなり,ついには, 光さえもその曲がりの中から逃げることができなくなります. 一般相対論が描くブラックホールとは, このような時空の曲率が大きくなって, 光でさえも脱出できなくなった天体なのです.


シュバルツシルト・ブラックホール

一番単純なブラックホールは,球対称のブラックホールで, シュバルツシルト・ブラックホール(Schwarzschild black hole) と呼ばれています. シュバルツシルト・ブラックホールは, 事象の地平面(event horizon)という, 一方通行の球面で取り囲まれています. 事象の地平面は,それより内側に一歩でも踏み込むと, 二度とこの世に戻ってこれないという境界面で, その内側からは光さえ出てこれません. その彼方のできごと(事象)が見えなくなる境界(地平面)という意味で, 事象の地平面と呼ばれています. ニュートン力学のイメージでは, 脱出速度が光速に等しくなる面が事象の地平面です.
このシュバルツシルト・ブラックホールの事象の地平面をとくに, シュバルツシルト半径(Schwarzschild radius)と呼びます. ブラックホールの質量を M,光速を c, 万有引力定数を G とすると, シュバルツシルト半径 rgは,

rg=2GM/c2

という簡単な式で表されます. 事象の地平面の半径は,ブラックホールが回転していると, 若干小さくなります.

いろいろなブラックホール
天体質量半径シュバルツシルト半径
地球5.98×1024kg6.38×106m0.9cm
太陽1.99×1030kg6.96×108m3km
中性子星1.4太陽質量10km4.2km
ミニブラックホール1012kg10-13cm
典型的なブラックホール10太陽質量30km
超大質量ブラックホール1億太陽質量2天文単位
c = 3×108m/s
G = 6.67×10-11 N m2 kg-2
1太陽質量 = 1.99×1030kg

ブラックホールも,中性子星と同様,はじめは理論の産物でした.
ブラックホールを表す, アインシュタイン方程式のもっとも簡単な解:シュバルツシルト解が, ドイツの天文学者シュバルツシルトによって得られたのが, 一般相対論の発表された翌年の1916年のことでした. 当時の段階では,とりあえず数学的な解が見つかったという状態で, シュバルツシルト解の物理的な意味や天文学的な意義については, 皆目わかっていませんでした.
さらにその後, 星が自分自身の重力のために無限小へ収縮し重力崩壊を起こし, ブラックホールになるのだ, と初めて指摘したのはオッペンハイマーとシュナイダー(1939年)です. これもあくまで理論的な予言であって,現実の宇宙で, そんな天体が見つかっていたわけではありません.
それから30年,ブラックホールの研究は,中性子星の場合と同様, アカデミックなテーマに留まっていました. そして1970年に入り,最初のブラックホール候補, はくちょう座X-1が発見されたのです.


はくちょう座X-1

銀河系内や隣のマゼラン雲で,現在までに発見されている, ブラックホール候補の一部を表にまとめておきます.

ブラックホール天体
名前質量
Cyg X-1 (はくちょう座X-1) 9.5太陽質量以上
LMC X-3 (大マゼラン雲X-3) 9.0太陽質量以上
GS2023+338 (はくちょう座V404) 6.3太陽質量以上
A0620-00 (いっかくじゅう座) 3.2太陽質量以上
GS1124-683 (はえ座新星) 3.1太陽質量以上
LMC X-1 (大マゼラン雲X-1) 2.5太陽質量以上

ちなみに,ブラックホールという名前は, 1969年頃にアメリカのジョン・アーチボルト・ホィーラー (John A. Wheeler)が付けたといわれています.


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