MK分類

ハーヴァード分類は温度系列による1次元分類ですが, 星本来の明るさをもう一つのパラメーターとして分類する方式がW.W.モルガンとP.C.キーナンによって1940年代に確立されました. 同じスペクトル型を示す星の中でも, 線の幅や複数の線の強さの比に違いがあり, それは星の本来の明るさの違いを反映している(絶対光度効果)ことから, 第2のパラメーターとして光度階級(luminosity class)が導入されました.
この分類法はモルガンとキーナンの頭文字をとって, 現在MK分類と呼ばれていますが, 星の明るさ(光度階級)と温度系列との2次元分類のシステムとなります. 光度階級はローマ数字の1から5,すなわち,I…Vの5段階で表されますが, さらに細分類が可能な場合は,a,bの添え字が付けられます. またこのような光度階級は,結局,星の大きさを表しています.

光度階級星の種類
I超巨星(supergiant)
II輝巨星(brightgiant)
III巨星(giant)
IV準巨星(subgiant)
V矮星(dwarf)または
主系列星(main sequence)

たとえば,太陽はG2V型,ベガはA0V型と分類され, これらの2つの星はともに矮星に属します.

◇ 絶対光度効果

同じスペクトル型の星(表面温度もほぼ同じ)ではスペクトル全体の様子は似ていますが, よく見るとある種のスペクトル線は超巨星や巨星よりも主系列星の方が強く, 別の種のスペクトル線は主系列星よりも巨星または超巨星で強く見えます. このような性質を絶対光度効果と呼びます. 巨星や超巨星では星の大気が広がっていて圧力が低いためガスの電離が進み, 高い電離状態にあるイオンの線がより強く見えることがあります (電離効果).

逆に,主系列星では星の大気の圧力が高いためガス粒子の衝突の頻度が高くなり, 特定の線の幅が広がって強く見えることもあります(衝突減衰効果). このような星の大気の中の複雑な過程を反映して絶対光度効果が起こります.

この絶対光度効果を利用して, スペクトル線の強さや線の強さの比を調べ,星の光度階級を決めます.

◇ HR図

すでにヘルツシュプルング(1905)およびラッセル(1913)の研究によって, 同一のスペクトル型(温度系列)に属している星でも, 星の明るさ(光度)が非常に異なるものがあることが明らかにされていました. すなわち,個々の星を温度と光度(絶対等級)の2次元の図上にプロットすると, 個々の星はダイアグラムの上であちこちに群をなしたようにして分布します. そこで,温度(スペクトル型)と光度(絶対等級) を2つの軸とする図を発見者の名を冠してヘルツシュプルング・ラッセル図(HR図)といいます.

HR図は星の進化や星団の研究には非常に便利な表現として用いられてきました. MK分類はこの点を考慮し, 星の明るさ(光度階級)によるスペクトルの微妙な相違を分類の指標として採用したのです. その結果,ある星のMK分類型が決められればその星が巨星か矮星かがわかり, したがって絶対等級が推定できます. それを観測された見かけの明るさと比較するとその星までの距離を知ることができます. この方法で求められた星までの距離,すなわち,視差を分光視差と呼んでいます.


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