水素のエネルギー準位(Energy Level)

原子に結合している電子は,量子力学的な性質によって, あるとびとびの状態しかとれません. その状態をエネルギー準位(energy level)といいます. エネルギー準位の中で, 最もエネルギーの低い状態を基底状態(ground state), それ以外の状態を励起状態(excited state)といいます. これらのエネルギー準位は, 量子数と呼ばれる自然数(n =1, 2, …)で番号づけられています. また原子と結合していない状態を電離状態(ionized state), そして原子と結合していない電子を自由電子といいます.
電子が,基底状態や励起状態,電離状態の間を移り変わる際に, 光の放出や吸収が起こります (それ以外の原因でも光の放出や吸収は起こります). 光を放出したり吸収したりして基底状態や励起状態, 電離状態の間を移り変わることを遷移(transition)と呼びます.

基底状態や励起状態は,とびとびのエネルギー準位になっているので, それらの間を電子が遷移する際に放出・吸収される光のエネルギーも, とびとびになります. 具体的には, 変化前の状態のエネルギーを E1, 変化後の状態のエネルギーを E2,そして 放出または吸収される光の振動数をνとすれば,

E1 - E2
という関係が成り立ちます(h はプランク定数). この結果,原子のスペクトルは,しばしば, とびとびの線スペクトルになります.

中性水素原子のエネルギー準位.

スペクトル系列として, n =1 と n'(>n)の状態間の遷移に対応する 線スペクトルをライマン系列(Lyman series), n =2 と n'(>n)の間を バルマー系列(Balmer series)と呼びます.
水素原子の場合,ライマン系列は紫外線域, バルマー系列は可視光域に存在するので, バルマー系列のスペクトルがよく観測されます.

エネルギー準位が非常に高くなって, たとえばが100ぐらいになると, スペクトル線はセンチ波の領域で放出されるようになります.
このような高い準位でのスペクトル線の呼び方として, Hα線などの呼び方に準じて, 下のレベルのエネルギー準位の番号 と, 遷移する準位の差(1をα,2をβ,3をγ…)を使って表します.
たとえば,
H110β
は,=112から=110へ遷移したときのスペクトル線のことです.


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