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裳華房メールマガジン (Shokabo-News)
バックナンバー(No.329;2016年11月号-1 数学・生物学新刊4点ほか)

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆   Shokabo-News No.329                2016/11/9   裳華房メールマガジン 2016年11月号-1   https://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 新刊点数が多いこと等のため2通に分けて配信いたします.ご了承ください. ★目次★ ─────────────────────────────────── 【1】新刊案内(数学,生物学)    『経済・経営のための 統計教室』『本質から理解する 数学的手法』    『ホルモンから見た生命現象と進化シリーズ6 回遊・渡り』    『ホルモンから見た生命現象と進化シリーズ7 生体防御・社会性』 【2】連載コラム 松浦晋也の“読書ノート”(26):    『戦争と日本阿片史』(二反長半 著,すばる書房) 【3】連載コラム 裳華房 編集子の“私の本棚”(42):    『天才科学者のひらめき36』(ゴーガン 著,創元社) ─────────────────────────────────── ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【1】新刊案内(数学,生物学) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●『経済・経営のための 統計教室 −データサイエンス入門−』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1567-2.htm 小林道正 著/A5判/188頁/2色刷/定価(本体2100円+税)/ 2016年10月発行/ISBN978-4-7853-1567-2  C3033  大学に入学して間もない経済学・経営学などを専攻する学生や,社会に出て 経済・経営の現場で働き始めたビジネスパーソン等が,統計学を学び始める・ 学び直すための入門書.40年以上にわたる著者の教育経験に基づき,なるべく 経済・経営分野の具体例を出しながら極力丁寧に解説をした.  また,あえて同じデータ(数値)を繰り返し用いることで,分析手法によっ て導かれる情報(得られる情報)が異なってくることを実感できるようにした. 通読すれば,単純な分析から次第に高度な分析へと進化していく様子がわかる ようになっている. 【主要目次】 1.確率の考え方 2.確率変数とは何か 3.データの構造を理解する 4.標 本の分布を知る 5.統計的推定の考え方 6.統計的検定の考え方 7.相関 分析とは何か 8.回帰分析とは何か ●『本質から理解する 数学的手法』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1570-2.htm 荒木 修・齋藤智彦 共著/A5判/210頁/2色刷/定価(本体2300円+税)/ 2016年11月発行/ISBN978-4-7853-1570-2  C3041  「数学は得意ではないけれども,嫌いではない.だから何とか根本から理解 したい」という大学理工系諸学科の学生(後輩諸君)のために,同じく学生時 代に数学で悩んだ2人の著者が,(先輩)数学ユーザーの立場から執筆した.  大学理工系の初学年で学ぶ基礎数学について,「学ぶことにどんな意味があ るのか」「何が重要か」「本質は何か」「何の役に立つのか」という問題意識 を常に持って考えるためのヒントや解答を記した.話の流れを重視した「読み 物」風のスタイルで,直感に訴えるような図や絵をなるべく多く示した. 【主要目次】 1.基本の「き」 2.テイラー展開 3.多変数・ベクトル関数の微分 4.線 積分・面積分・体積積分 5.ベクトル場の発散と回転 6.フーリエ級数・変 換とラプラス変換 7.微分方程式 8.行列と線形代数 9.群論の初歩 ●『ホルモンから見た生命現象と進化シリーズ6 回遊・渡り −巡−』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5119-9.htm 安東宏徳・浦野明央 共編/A5判/188頁/定価(本体2300円+税)/ 2016年11月発行/ISBN978-4-7853-5119-9  C3045  動物は,生活史の中のさまざまな段階で,さまざまな理由により,さまざま な距離を移動する.鳥の渡りや魚の回遊などは,摂食,成長,生殖や体液浸透 圧調節などの生理機能に密接に関連し,季節の移り変わりに応じて起きている. 一方,予期せずに起こる生息環境の変化に対応するためにも動物は移動する.  本書は,回遊と渡りに代表される“移動”のしくみをホルモンの側面から解 明しようとする研究の成果を基に,水圏から陸,空のさまざまなフィールドで 繰り広げられる動物の生き生きとした“移動”の様を紹介した. 【主要目次】 1.序論 2.回遊・渡りの基礎となる神経内分泌学の概説 3.チョウの渡り 4.アユの両側回遊 5.サケとクサフグの産卵回遊 6.両生類と爬虫類の移 動 7.鳥類における渡りの生活史段階の制御 8.クマの移動と冬眠 ●『ホルモンから見た生命現象と進化シリーズ7 生体防御・社会性 −守−』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5120-5.htm 水澤寛太・矢田 崇 共編/A5判/280頁/定価(本体2900円+税)/ 2016年10月発行/ISBN978-4-7853-5120-5  C3045  生物は身を守るために様々な防御手段をもっており,一連の防御活動に目を 向けることは,ホルモンの多機能性と進化を理解する上で大変に重要である.  本書では,生体防御を司る内分泌系に焦点をあて,第一部では体内における 防御機構として、おもに免疫系について様々な観点から解説し,第二部では個 体における防御機構として,擬態や保護色,体色変化,粘液などを取り上げ, 第三部では集団における防御機構として,群れやなわばり,社会順位,昆虫の 社会性などを紹介した.また,抗菌ペプチドやヘビ毒など,魚類と両生類の外 分泌系などについても章をあてて紹介する. 【主要目次】  1.序論 −野生の内分泌− 第1部 体内の攻防  2.生体防御と比較内分泌学 3.ウイルスの侵入 4.生理活性物質とミト  コンドリア 5.魚類下垂体と免疫 6.ヒトにおける妊娠免疫 7.魚類に  おける妊娠免疫 第2部 個としての攻防  8.昆虫の擬態 9.鳥類と哺乳類の保護色 10.光があやつる魚類の体色  とホルモン 11.魚類の粘液 12.生体防御ペプチドによる両生類の先天  的防御機構 13.蛇毒成分の多様な生理機能と分子進化・遺伝子発現 第3部 集団による攻防  14.動物はなぜ群れを形成するのか 15.魚類における社会順位とホルモ  ン 16.魚類のなわばりと防御行動 17.集団とリズム 18.昆虫におけ  る社会性のメカニズム ※物理学,化学分野の新刊書籍はShokabo-News 2016年11月号-2でご案内します. 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【裳華房 新刊一覧】 https://www.shokabo.co.jp/book_news.html 【ご購入のご案内】  https://www.shokabo.co.jp/order.html 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2】[連載コラム]松浦晋也の“読書ノート” (第26回) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  ノンフィクション・ライター/サイエンスライターの松浦晋也さんと鹿野司 さんに,お薦め書籍や思い出の1冊,新刊レビュー等をご執筆いただきます. 今月号のご担当は松浦晋也さんです.  ・バックナンバーはこちら→ https://www.shokabo.co.jp/column/ ─────────────────────────────────── ◆ 阿片ケシ篤農家の生涯と、星一の苦難 ◆ ● 二反長半 著『戦争と日本阿片史』(すばる書房)  前々回、前回と星製薬の創業者である星一(ほし・はじめ、1873〜1951)か ら話を展開したが、星一とモルヒネ(いうまでもなく阿片ケシの未熟果から採 取する樹液から精製される)のことがどうしても気になって、『戦争と日本阿 片史 −阿片王 二反長音蔵の生涯−』を読んでみた。本来なら一の息子である 星新一の『人民は弱し 官吏は強し』(新潮文庫ほか)から読むべきなのかも 知れないが、こちらは学生時代に読んで、みっちりと描き込まれた官による陰 湿な民間いじめにすっかり参ってしまった記憶があって、どうしてもすぐには 読む気になれなかったのである。  本書は、日本の阿片ケシ栽培の先駆者である二反長音蔵(にたんちょう・お とぞう、1875〜1951)の生涯を阿片栽培の歴史とからめてまとめた本である。 著者は音蔵の次男で、1907年生まれ。本名を二反長半二郎といい、長じてから 二反長半(にたんおさ・なかば)というペンネームで児童文学者となり、関西 で活動した。この本の校正が終わった直後に倒れ、不帰の客となる。つまり、 この本は著者の遺著というわけだ。  清朝と英国が戦った阿片戦争(1840〜1842)の結末を知った日本は、明治維 新後、国内の阿片栽培と流通を厳しく禁止した。日本政府が阿片と向き合わね ばならなくなるのは、日清戦争(1894〜1895)の勝利で台湾を植民地として得 た時からである。台湾には多数の阿片中毒者がおり、供給を一気に断ち切ると 反乱が起きそうな情勢だった。反乱が起きれば日本の支配体制の確立は難しく なる。嫌でも阿片を供給しなくてはいけなくなったのだ。  第四代台湾総督となった児玉源太郎(1852〜1906)は、自ら民生局長に任命 した後藤新平(1857〜1929)の策を容れて、台湾における阿片政策の基本ライ ンを策定する。阿片を専売品として登録した中毒者に販売する。その一方で流 通を取り締まり、新規の中毒者の発生を防ぐ。世代交代とともに阿片中毒者は 減っていく――漸減策と呼ばれる政策である。  習慣性・中毒性のある嗜好品を専売品にすれば、政府は潤う。同時に専売に 携わる者も潤う。  大阪・摂津(今の茨木)の農民、川端音二郎は日清戦争直後にこのことに気 が付いた。阿片ケシを栽培して政府に買い取ってもらえば、合法的に貧しい農 村が豊かになる――彼は何度となく内務省衛生局長であった後藤新平に阿片の 栽培許可と政府一括買い上げを求める建白書を提出し、まずは試験栽培という ことで自らが栽培する許可を勝ち取る。やがて、裕福な二反長家に婿入りした 音二郎は名前も音蔵と変え、阿片ケシの栽培の普及拡大と品種改良に没頭して いく。  音蔵の人生を描くパートは、文字通りの阿片バカ一代記だ。婿入りした二反 長家の財産を突っ込んで品種改良に励み、野生種しかなかった日本のケシから 良質の阿片がとれる品種を作り出していく。同時に、確立した栽培方法を惜し げもなく人に教え、阿片ケシ栽培を「儲かる、農村を豊かにする作物」として 拡げていく。  周囲に問題が出なかったわけではない。阿片ケシの栽培があれば、政府より も高く買い取ろうとする密売者も寄ってくる。欲望に負け、密売者に阿片を売 って逮捕される農民も出る。音蔵はバカ正直に「専売に応じろ、密売に応じる な」と説いて歩く。  後藤新平の知己を得、さらには星製薬社長の星一と知り合い、一介の農民で は考えられないほどのコネクションを築きつつ、あくまで音蔵は農民としての 立場を全うする。やがて満州国が成立すると、音蔵は乞われて何度も阿片の栽 培指導に満州に赴くようになる。渡満を重ねるほどに、目的地は奥地になって いく。それは、世界的な阿片流通監視の目を盗んで、政府組織が阿片密売で裏 金を作っていたからなのだが、音蔵はそこまで考えない。あくまで「お国のた め」と阿片ケシ栽培を進めていく。  その一方で阿片のもつ暗黒面を、音蔵が知らなかったわけではないようだ。 本書には密売人が音蔵のもとを訪れて「あんたの腹一つでいくらでも儲かりま っせ」と直談判する様が描かれている。音蔵は一切そのような雑音を聞き入れ なかったそうだ。  音蔵の一代記は、この本の価値の1/3だ。別の1/3は、一次資料に基づく、日 本の阿片闇商売の実態の記述である。著者は、大陸浪人と思しき「祇園坊」と 名乗る者の執筆した書簡を入手していた。祇園坊は大正年間に阿片密売に携わ っていたが、日本の阿片密売のボスに中国大陸における阿片流通の実態を書き 送っていたのだ。  それによると、日本陸軍が阿片密売のうまみを知ったのは、第一次世界大戦 で青島を攻略・占領した時だった。勝利と同時に陸軍は現地の阿片流通ルート も掌握し、1922年に撤兵するまでにかなりの裏金(30万円とも100万円とも) を作ったのだという。なお、撤兵にあたって裏金は協力する中国人の名義で青 島周辺の不動産に変換されて塩漬け状態になり、15年後の1937年に始まった日 華事変に際して、軍費を充当するため換金されたとのことだ。  祇園坊書簡に基づく本書の記述は詳細である。大正年間の阿片の闇市場にお ける価格まで出てくる。また、現地の阿片流通には軍を現地除隊した日本人も 現地側エージェントとして関わっているともある。軍務経験がある民間人は、 軍にコネがあると同時に、事が露見した場合にはシッポ切りのシッポともなる。 日本の公的機関が継続的に、闇の阿片流通に手を出していたことは間違いない だろう。  ただし、祇園坊が観察した時期の青島における阿片の取扱量は、英、仏、露、 米、日の順番だったそうで、欧米のあこぎっぷりもなかなかのものである。  祇園坊書簡には、天津における阿片流通も書いてあって、そこには「星製薬 のモルヒネが最上級品として取り引きされている」とある。これは、星新一が 『人民は弱し 官吏は強し』で描いた星製薬のモルヒネビジネスが、必ずしも きれいごとのみではなかったことの傍証と言えるのではなかろうか。  そう、本書の価値の最後の1/3は、音蔵と星一の関係についてである。  日本は薬用モルヒネの供給をドイツに頼っていたが、第一次世界大戦勃発で モルヒネが入らなくなる。かねてから後藤新平と懇意だった星一は台湾阿片に 目を付け、後藤のバックアップを受けてモルヒネの精製に成功する。日本の薬 用モルヒネは一手に星製薬が引き受けることとなり、星製薬は大きく成長する。 さらに星は、モルヒネ原料の阿片ケシの国産化を画策し、その過程で星と音蔵 は知り合った。星は阿片ケシ栽培にいそしむ音蔵を激賞し、鼓舞する。  やがて、後藤・星のラインはモルヒネ利権を握っていたが故に、後藤の政敵 であった加藤高明(1860〜1926)、そして加藤と結びついた第一製薬・三共製 薬、さらには星と不仲であった内務省からの激烈な攻撃にさらされることにな る。  攻撃のネタとなったのは台湾総督府と星製薬の癒着だった。  台湾総督府高官の夫人が組織した婦人慈善会という組織が、星製薬の株式を 大量に持っていたのである。創業者の星一の持ち株が3572株、対して婦人慈善 会の持ち株は3200株。大変な量だ。これが「利益供与ではないか」と1918年 (大正7年)末から翌年にかけての第41期帝国議会において憲政会から追及さ れたのだ。  音蔵は星の苦境に胸を痛め「公正明大にやらねばならん」と星に書簡を送っ たという。が、星からの返事はなかった。本書によると、この騒動の直後に星 製薬株主リストから、婦人慈善会は消えているとのこと。どうもこの婦人慈善 会は、星一が裏で動いて設立させたものらしい。受け皿もお膳立てしての株式 譲渡なら、完全な利益供与である。  これに「阿片事件」が追い打ちを掛ける。1921年(大正10年)、横浜税関に 100トンを超える精製前の阿片が星製薬の所有物として置いてあるのが見つか ったのだ。星の側からすると「税関は慣習として国内法の適用を受けない」と いうことで、関係官庁に話を通した上で置いていたものだったが、「星が違法 の阿片を国内に持ち込んだ」ことになり、一大裁判となってしまった。最終的 にこの件は星の無罪となるが、これにより星製薬は大きな打撃をうけた。  本書が描く星一と星製薬の苦難はここまでである。その後、1924年(大正13 年)に加藤高明が内閣総理大臣に就任して、星製薬にはより一層の圧力がかか るのだが、おそらくは二反長音蔵とは関係なしということで割愛したのだろう。  本書の記述だけで、明治から昭和に至る日本の阿片ビジネスがすべてわかる わけではないだろう。後藤新平発案の台湾における漸減策も、どうもなにか裏 があったような雰囲気がある。扱う題材が題材だけに、本書もすべてを正直に 書いているかどうかはわからない。それでも、私にとっては色々知らないこと が多く、大変ショッキングな一冊だった。  特に、第一次世界大戦時の青島から、日本陸軍の阿片を巡る闇商売が始まっ ていたというのは、驚きだ。阿片王・里見甫(さとみ・はじめ、1896〜1965) に代表される、阿片を使った軍部の裏金作りは大正時代から始まっていたので ある。  その闇と欲望の渦の中心にいながら、愚直に篤農家としての立場を貫きとお した二反長音蔵もまた、特異な人物だと言わねばならないだろう。本書の記述 には息子である著者のひいき目も入っているかもしれないが、少なくとも70歳 近くにもなって、阿片ケシ栽培指導のために満州奥地に赴く音蔵の姿勢は、強 烈な無私の精神を感じさせる。  その無私の善意が、阿片の害悪の直視には向かずに、魅力的な換金作物とし ての阿片ケシ栽培に向かった理由を、本書は教えてくれない。「音蔵には教養 がなく、視野が狭かったのだ」と言ってしまえばそれまでなのだが、私はそれ だけが理由とは思えない。なにしろ、本書で描かれる音蔵は、非常に聡明な人 物なのだ。  読後、心に残るのは、人間の精神が時として見せる、奇妙な歪みなのである。 【今回紹介した書籍】 ● 『戦争と日本阿片史 −阿片王二反長音蔵の生涯−』 二反長半 著/A5判/222頁/1977年8月刊行/すばる書房 【松浦晋也さんのプロフィール】 ノンフィクション・ライター.1962年東京都出身.現在,PC Online で「人と 技術と情報の界面を探る」,日経トレンディネットで「“アレ”って何? 読 めばわかる研究所」,日経テクノロジーで「小惑星探査機はやぶさ2の挑戦」 を連載中.主著に『小惑星探査機「はやぶさ2」の挑戦』『はやぶさ2の真実』 『飛べ!「はやぶさ」』『われらの有人宇宙船』『増補 スペースシャトルの 落日』『恐るべき旅路』『のりもの進化論』などがある. Twitterアカウント https://twitter.com/ShinyaMatsuura       「松浦晋也の“読書ノート”」 Copyright(C) 松浦晋也,2016  次号は鹿野司さんにご執筆いただきます.どうぞお楽しみに! ※本コラムは本メール配信約1か月後を目安に裳華房Webサイトに掲載します. https://www.shokabo.co.jp/column/ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【裳華房 分野別書籍一覧】 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/0000.html 【正誤表などサポート情報】 https://www.shokabo.co.jp/support/ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【3】[連載コラム]裳華房 編集子の“私の本棚”(第42回) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  編集部の有志が月替わりで,思い出の一冊やお薦めの書籍などを語ります. ─────────────────────────────────── ◆ “偶然”を見逃さなかった科学者たちの物語 ◆ ●ゴーガン 著『天才科学者のひらめき36』(創元社)  編集者のFです。先月、今年のノーベル賞が発表されましたね! 発表の瞬 間をライブで観た方も多かったのではないでしょうか。小社の編集部でも各機 関の予想を拝見しながら(あわよくばウチの本と関係するアノ研究がとると嬉 しいという本音も出つつ……)、今年も楽しみました。  ところで、すばらしい発見をした科学者のインタビューの中で、偶然の出来 事が発見につながったというエピソードを耳にすることがあります。たとえば、 2000年にノーベル化学賞を受賞した白川英樹氏のエピソード(助手が間違えて 必要量の1000倍の触媒を入れてしまい、この偶然が導電性高分子を発見するき っかけとなった)は、マスコミにも取り上げられ有名になりました。  今回紹介する『天才科学者のひらめき36 世界を変えた大発見物語』では、 このような偶然を味方につけて実を結んだタイプの大発見を、自然科学や医学、 情報工学などの幅広い分野から36個ピックアップしてまとめています。  ただし、本書は、発見に至るエピソードや研究内容を、ふつうに紹介した本 ではありません。著者は、偶然を成功につなげるには、偶然に訪れる「チャン ス」のほかに、その偶然を見逃さない充分な「知識」、さらに偶然の正体をつ きとめたいという強い「好奇心」、この3拍子が揃うことが条件になると語っ ています。本書は、36個それぞれのエピソードにおいて、一貫してこの3拍子 にスポットを当て、発見の条件を鮮明にしている点がユニークです。  さらに、これらの発見を大まかな年代別に分類し、古いもの(1800年以前) から新しいもの(2000年代)へと順に紹介しています。万有引力の法則、ダイ ナマイト、ペニシリンなど、よく知られているエピソードも含まれますが、様 々なジャンルの発見を、3拍子というコンセプトで年代別に並べると、また違 った見方ができて、「チャンス」の傾向が掴めるかも(?)しれません。  とはいえ、そんな小難しいことは考えてなくても、一般向けの科学の読み物 なので専門的な内容はあまり含まれていませんし、フルカラーでデザイン性も 高く、ビジュアル面でも楽しませてくれる一冊です。  高校生や文系の方にもおすすめです。 【今回紹介した書籍】 ●『天才科学者のひらめき36 −世界を変えた大発見物語−』 リチャード・ゴーガン 著,北川玲 訳/判型22.6cm×17.4cm/256頁/ 定価(本体2000円+税)/2012年4月/創元社/ISBN 978-4-40022-8 版元品切れ中 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【オンデマンド出版書籍】 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/d-pub.html 【電子書籍のご案内】  https://www.shokabo.co.jp/ebooks/index.html 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ─────────────────────────────────── 引き続き,Shokabo-News 2016年11月号-2 も是非ご覧ください. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★ Shokabo-Newsの配信停止・アドレス変更は下記URLよりお願いします ★ https://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html メールマガジンのご意見・ご感想は m-list@shokabo.co.jp まで. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 自然科学書出版 (株)裳華房 〒102-0081 東京都千代田区四番町8-1 Tel:03-3262-9166 Fax:03-3262-9130 電子メール:info@shokabo.co.jp URL:https://www.shokabo.co.jp/  Twitterアカウント:@shokabo 【個人情報の取り扱い】 https://www.shokabo.co.jp/policy.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(c) 裳華房,2016      無断転載を禁じます.



         

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