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裳華房メールマガジン (Shokabo-News)
バックナンバー(No.279;2012年9月号)

禁無断転載 ※価格表記は配信当時のままです。
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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆   Shokabo-News No.279                2012/9/27   裳華房メールマガジン 9月号   https://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 今回のご案内 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆  ◇ 新刊    『イラスト 基礎からわかる生化学』『光化学』『専門課程 物理学実験』    物理化学入門シリーズ(『化学結合論』『化学熱力学』『量子化学』)  ◇ 近刊(10月刊行予定)    『相対論的量子力学』『演習でクリア フレッシュマン有機化学』  ◇ 鹿野 司の“読書ノート”(3)      「科学とはどういう営みなのか」  ◇ 裳華房の“古書”探訪 (6)     トムソン 著『化學と電子』(初版 昭和3年)  ◇ 売上げランキング(物理学分野,生物学分野) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ Shokabo-News 会員の皆様 こんにちは m(_ _)m  前号は回線トラブルのため配信が遅れましたことをお詫び申し上げます.  リニューアルした Shokabo-News の第6号をお届けします.  前回ご案内した通り,この秋より二つの新しいシリーズの刊行を開始します.  一つは,化学分野の「物理化学入門シリーズ」.  https://www.shokabo.co.jp/series/407_butsurikagaku.html  今月『化学結合論』『化学熱力学』『量子化学』の3点を同時刊行しました. 各書籍については,今回の「新刊案内」をご参照ください.  もう一つは,物理学分野の「量子力学選書」.  https://www.shokabo.co.jp/series/315_quantum.html  学部レベルで学ぶ量子力学の知識と,専門分野で最新の論文を読解できる知 識との間を結ぶことを目的に刊行するもので,『経路積分』や『場の理論』な ど全8巻を予定しています(シリーズ詳細は上記URL参照).  第一弾として,川村嘉春著『相対論的量子力学』を10月下旬に刊行します. (今回の「近刊案内」をご参照ください.)  上記のシリーズを含め,「新刊案内」では6点,「近刊案内」では10月刊行 予定の2点をご紹介します.  一方、連載第3回目となる「鹿野 司の読書ノート」はロビン・ダンバー著 『科学がきらわれる理由』を,また「裳華房の“古書”探訪」では,電子と同 位体の発見で著名なJ.J.トムソンの『化學と電子』(初版 昭和3年)をご紹介 します.  今後も Shokabo-News をご愛読のほど,よろしくお願いいたします.また, ご意見・ご感想を m-list@shokabo.co.jp までお寄せいただければ幸いです. (Twitterをお使いの方はアカウント @shokabo まで)  ★ お知らせ ★ 1.「大学・短大・高専用教科書のご案内」   https://www.shokabo.co.jp/text.html 2.[生物分野の教科書など]図表ファイルがダウンロードできます.   https://www.shokabo.co.jp/textbook/text-tm.html#bio 3.「神保町ブックフェスティバル 本の得々市ワゴンセール」に出店します!   10/27(土)〜28(日),東京・神保町 すずらん通り商店街出店コーナー   https://www.shokabo.co.jp/fair/index.html#etc 4.「第19回謝恩価格本フェア」に参加します.(10/17〜12/17)   http://www.bargainbook.jp/ 5.「裳華房 出版原稿受付窓口」   https://www.shokabo.co.jp/scripts.html ─────────────────────────────────── 【裳華房 新刊一覧】 https://www.shokabo.co.jp/book_news.html 【ご購入のご案内】  https://www.shokabo.co.jp/order.html ─────────────────────────────────── ★★★★★★★★★★★★★★ 新 刊 案 内 ★★★★★★★★★★★★★★★ ◆ 『イラスト 基礎からわかる 生化学 −構造・酵素・代謝−』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5854-9.htm 坂本順司 著/A5判/292頁/2色刷/定価3360円(税込)/裳華房/ ISBN978-4-7853-5854-9  難解になりがちな生化学を,かゆいところに手が届く説明で指南する入門書. 目に見えずイメージがわきにくい生命分子を多数のイラストで表現し,色刷り の感覚的なさし絵で日常経験に結びつける.なじみにくい学術用語も,ことば の由来や相互関係からていねいに解説する. 【主要目次】 第1部 構造編 1.糖質/2.脂質/3.タンパク質とアミノ酸 /4.核酸とヌクレオチド 第2部 酵素編 5.酵素の性質と種類/6.酵素の 速度論とエネルギー論/7.代謝系の全体像/8.ビタミンとミネラル 第3部 代謝編 9.糖質の代謝/10.好気的代謝の中心/11.脂質の代謝/12.アミ ノ酸の代謝/13.ヌクレオチドの代謝 ◆ 『光化学 −光反応から光機能性まで−』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3089-7.htm 杉森 彰・時田澄男 共著/A5判/242頁/定価2940円(税込)/裳華房/ ISBN978-4-7853-3089-7  『化学新シリーズ 光化学』(杉森 彰著)をベースに,光物性・光機能性 を大幅に加筆して編み直した.光化学の基礎(励起状態の化学)を十二分に踏 まえつつも,光ディスクやルミネッセンス,ホログラフィー,レーザーなど, 時代をリードする光化学の現状を鮮やかに描き出した基礎光化学の入門書. 【主要目次】1.光化学の広がり/2.光反応と熱反応との鮮やかな対比/3. 励起状態/4.光化学反応の特質/5.光(誘起)電子移動/6.増感/7.官能 基の光化学特性と光反応の型/8.光化学の実験的方法 I/9.光化学の実験的 方法 II/10.自然界における光化学現象/11.光化学の応用/12.光電効果と その応用/13.光記録と光通信/14.光の発生/15.発光と表示/16.光化学 の位置づけと放射線化学・電気化学 ◆ 『専門課程 物理学実験』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-2238-0.htm 高野良紀・植松英穂・浅井朋彦・B.Zulkoskey 編/ A5判/372頁/定価4725円(税込)/裳華房/ISBN978-4-7853-2238-0  物理学科で学ぶ2年および3年次生を対象とした物理学実験の教科書.  実験で必要となる原理をできるだけ平易に説明し,学生が実験に対して興味 をもてるように実験テーマにまつわる歴史的な出来事を盛り込みながら解説. 実験において要となるような結果を図示することにより,実験の精度や実験値 と理論値との違いに目が向くように配慮した.  なお,学生の科学英語の力を養うために,2つの実験テーマについては英文 にしている.(全30章)   ◇◇◇ 新シリーズ 刊行開始! ◇◇◇ ◆ 『物理化学入門シリーズ 化学結合論』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3417-8.htm 中田宗隆 著/A5判/190頁/定価2205円(税込)/裳華房/ ISBN978-4-7853-3417-8  物理化学のみならず,無機化学・有機化学等すべての化学分野の基礎知識で ある化学結合を,量子論の基礎をふまえつつ,包括的かつ系統的に楽しく学べ る快著.化学結合の全体像の美しさを知ることによって,化学の真髄にふれる ことができる. 【主要目次】1.原子の構造と性質/2.原子軌道と電子配置/3.分子軌道と 共有結合/4.異核二原子分子と電気双極子モーメント/5.混成軌道と分子の 形/6.配位結合と金属錯体/7.有機化合物の単結合と異性体/8.π結合と 共役二重結合/9.共有結合と巨大分子/10.イオン結合とイオン結晶/11. 金属結合と金属結晶/12.水素結合と生体分子/13.疎水結合と界面活性剤/ 14.ファンデルワールス結合と分子結晶 ◆ 『物理化学入門シリーズ 化学熱力学』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3418-5.htm 原田義也 著/A5判/212頁/定価2310円(税込)/裳華房/ ISBN978-4-7853-3418-5  初学者を対象に,化学熱力学の基礎を,原子・分子の概念も援用してわかり やすく丁寧に解説している.また,数式の導出過程も省略することなく詳しく 記してあるので,式を一歩一歩たどることで,とかくわかりづらい化学熱力学 の諸概念を,論理的に正確に理解することができる. 【主要目次】1.序章/2.気体/3.熱力学第1法則/4.熱化学/5.熱力学第 2法則/6.エントロピー/7.自由エネルギー/8.開いた系/9.化学平衡/ 10.相平衡/11.溶液/12.電池 ◆ 『物理化学入門シリーズ 量子化学』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3419-2.htm 大野公一 著/A5判/264頁/定価2835円(税込)/裳華房/ ISBN978-4-7853-3419-2  量子論の誕生から最新の量子化学までを概観し,量子化学の基礎となる考え 方や技法を,初学者を対象に丁寧に解説.根本的に重要でありながらあまり説 明されてこなかった事項や,応用分野に役立つ事項を含めつつも題材を精選し, 量子化学の最重要事項を学べるよう工夫されている.  【主要目次】1.量子論の誕生/2.波動方程式/3.箱の中の粒子/4.振動 と回転/5.水素原子/6.多電子原子/7.結合力と分子軌道/8.軌道間相互 作用/9.分子軌道の組み立て/10.混成軌道と分子構造/11.配位結合と三 中心結合/12.反応性と安定性/13.結合の組換えと反応の選択性/14.ポテ ンシャル表面と化学 ★★★★★★★★★ 近 刊 案 内 (10月刊行予定!)★★★★★★★★★★★ ◆ 『演習でクリア フレッシュマン有機化学』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-3090-3.htm 小林啓二 著/B5判/212頁/2色刷/定価2940円(税込)/裳華房/ ISBN978-4-7853-3090-3  分子構造論の初歩から基礎的な有機反応まで,最も重要な題材を精選し,じ っくりと丁寧に解説.ポイント・ポイントに織り込まれた数多くの演習問題に 取り組むことによって,自らの到達度を確認しながら効率的に学習を進めるこ とができる.演習問題の詳細な解答(および解説)付き.   ◇◇◇ 新シリーズ 刊行開始! ◇◇◇ ◆ 『量子力学選書 相対論的量子力学』 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-2510-7.htm 川村嘉春 著/A5判/368頁/定価4830円(税込)/裳華房/ ISBN978-4-7853-2510-7  特殊相対性理論と量子力学が融合された理論──相対論的量子力学の入門書. 前半では,ディラック方程式の構造と特徴を中心に解説.後半では,相対論的 量子力学の検証,とくに荷電粒子と光子の絡んださまざまな散乱過程と,高次 の量子補正について考察する. ─────────────────────────────────── 【裳華房 分野別書籍一覧】 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/0000.html 【正誤表などサポート情報】 https://www.shokabo.co.jp/support/ ─────────────────────────────────── ★★★★★★ 【新連載】鹿野 司の“読書ノート” (第3回) ★★★★★★ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  ノンフィクション・ライター/サイエンスライターの松浦晋也さんと鹿野司 さんに,お薦め書籍や思い出の1冊,新刊レビュー等をご執筆いただきます. 今月号のご担当は鹿野 司さんです.  ・バックナンバーはこちら→ https://www.shokabo.co.jp/column/ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ◇ 科学とはどういう営みなのか ◇ ◆『科学がきらわれる理由』(ロビン・ダンバー著,青土社)  読書が好きな人ならば、きっと自分なりの、良い本とはこういうものだとい う規準を持っていることだろう。  筆者の場合、それは読むことで自分の思考の幅を広げてくれるタイプの本だ と思っている。それを読んだことをきっかけに、気がかりな事柄を読み解く手 がかりが得られたり、違う解釈もあるだろうと、考えを発展させていけるもの。 『科学がきらわれる理由』(青土社)は、そういうタイプの一冊だ。  この本のタイトルは、内容をあまり正確には現わしていない。原著タイトル は“The trouble with science”で、科学をめぐる災難といった感じだろうか。 決して、科学のネガティブな面を強調する本ではなく、むしろ科学離れが進む 現代にあって、科学の意義や妥当性を検証しつつ、多くの人々に科学的な思考 法を受け入れてもらうことを志向する。  かつて、イギリスのC・P・スノウは『二つの文化と科学革命』(みすず書 房)の中で、理系と文系という知的に優れた二つの文化が、互いを理解しあお うとしないことの不幸を嘆き、両者の交流を説いたことがあった。本書は、そ の正当な後継の書といってもいいかもしれない。  著者のロビン・ダンバーは、英国霊長類学会の会長を務めたこともある、霊 長類の行動生態学と進化心理学の分野でイギリスを代表する研究者だ。ヒトの 言葉の起源と、ヒト科霊長類の集団の大きさを結びつけたユニークな仮説でも 有名で、ダンバー数という、各個体と安定した関係が維持できる個体数の認知 的上限を表す用語もある。  その彼が、ロンドン大学在職中、学部1年生向けに、科学とはどんな行為な のかを解き明かした講義をもとに、本書はまとめられた。  まず冒頭、ダンバーは、これまでの科学哲学の流れについて、簡単にして当 を得た概観を行っている。このまとめが実に手際よくて、フランシス・ベーコ ンからデビッド・ヒューム、カール・ポパー、トマス・クーン、イムレ・ラカ トシュなど、科学哲学における有名どころの思想のキモと、その問題点が簡潔 明瞭に語られる。仮説・検証モデルから反証、パラダイム論、さらに相対主義 やポストモダニズムまで、科学論の重要キーワードはほぼ網羅されて、その種 の迷路のような論議は苦手と感じる人でも、素直に通読できるだろう。  さらに、専門分野を生かした視点から、科学とはどういう営みなのかが語ら れる。たとえば経験科学の方法は、人類に普遍的なだけでなく、多くの鳥類や 哺乳類の生活においても、重要な特徴だとダンバーはいう。世界にある規則性 について学び、次に何が起きるかを予測することは、生き残りの基礎といえる。 その素朴な行為の発展が、科学の進め方の基本的姿勢だというのだ。  しかし、ならば何故、科学は理解されにくいのだろう。その理由は、人の知 能が、霊長類特有の複雑な社会の中で、いかに生き延びるかを目的に発達した からだという。  人は、ある立場に置かれた人がどう感じるか、感情移入して理解できる。こ れは複雑な社会に適応するべく、人がとりわけ高度に発達させた能力だ。これ があるから、人は物語を楽しむことができ、現在のような文明や文化を築き上 げることができたのだが、それがゆえに論理的な思考は必ずしも上手ではない し、心のないものに心を読みとる傾向までももっている。  これが、中でも長足の進歩を遂げた科学の分野(ある分野の科学が急速に発 展した理由も、ダンバーは理に叶った説明をしている)を、理解しづらくして いるという。そしてこの仮説から、ダンバーは科学教育のあり方にも論を進め ていく。  ひところ、日本の理科教育の現場でも、過度な相対主義的な考え方が広まっ て、科学的な世界解釈が、恣意的に選べる多くの解釈の中の一つにすぎないと 主張されたことがあった。その種のバカげた考えに対抗し、現実的に世界と向 かい合うとはどういうことかを考える上でも、本書は面白いきっかけを提案し てくれるのではないかと思う。 ◆『科学がきらわれる理由』   ロビン・ダンバー 著/松浦俊輔 訳/四六判/314頁/   定価2730円(税込み)/1997年6月発行/ISBN978-4-7917-5554-7/   青土社 (版元品切れ中) 【鹿野 司さんのプロフィール】 サイエンスライター.1959年愛知県出身.「SFマガジン」等でコラムを連載中. 主著に『サはサイエンスのサ』(早川書房),『巨大ロボット誕生』(秀和シ ステム),『教養』(小松左京・高千穂遙と共著,徳間書店)などがある. ブログ「くねくね科学探検日記」 http://blog.blwisdom.com/shikano/       「鹿野 司の“読書ノート”」 Copyright(c) 鹿野司,2012  次号は松浦晋也さんにご執筆いただきます.どうぞお楽しみに! ※本コラムは本メール配信約1か月後を目安に裳華房Webサイトに掲載します. https://www.shokabo.co.jp/column/ ★★★★★★ 【連載コラム】裳華房の“古書”探訪(第6回)★★★★★★★ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  弊社の起源は,江戸時代,伊達藩の御用板所であった「仙台書林 裳華房」 に遡ります.ここでは,科学書の出版に力を入れ始めた大正時代から昭和時代 に刊行された書籍の中から毎回1冊ずつ取り上げて紹介いたします. 【バックナンバー】 https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/index.html 【裳華房の歴史】  https://www.shokabo.co.jp/history.html 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ◆ トムソン 著『化學と電子』(初版 昭和3年)  本書は,電子の発見(1897年)や同位体の発見(1913年),また質量分析器 の発明などで著名なイギリスの物理学者,J.J.トムソン(Sir Joseph John Thomson)[*1]が著した“The Electron in Chemistry”(1923年)の全訳です.  原著のサブタイトルに“Being Five Lectures Delivered at the Franklin Institute, Philadelphia”とあるように,トムソンがフランクリン・メダル を受賞した(1922年)ことをきっかけとして,1922〜23年にかけてアメリカの フランクリン協会で行われた5つの講演をまとめたものです(訳者によれば, 講演内容を寄稿論文として同協会の会誌に連載した5つの原稿を単行本化した もののようです).  具体的な内容は,目次[*2]をご参照ください.   https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1928thomson-denshi/mokuji.pdf  また,第一章(序論)の全ページ(計29頁)を下記に掲載しました.   https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1928thomson-denshi/chapter1.pdf  物理学者であったトムソンは,なぜ“化学”を主題に選んだのでしょうか. 著者の序文には次のようにあります.   今世紀二十幾年間の科學の進歩に於て物理學者は此の未到の領域を開拓   し始め原子及び分子の概念を明かにし遂に異種の原子相互の差違と如何   にして原子が分子に組立てられるかといふ根本的の疑問とを討議する迄   に到つたのである。此の問題こそは實に化學者の主題とせる所であるが   故に若し近世原子概念にして誤りなしとせば従來永く隔てられて來た物   理と化學との障壁は全く取り除かれたと申すべきである。   今後新しい物理學の素晴らしい發展は寧ろ化學の方面であらうと思はれ   る多くの理由がある。……   https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1928thomson-denshi/intro.pdf  トムソンが元々化学に興味をもっていたこともあります.1903〜1904年に発 表されたトムソンの原子モデルは,元素の化学的性質の説明に力を入れ,原子 構造に基づいて原子価を説明し,原子価と周期律の関係を明確に指摘するもの でした.  また講演が行われた当時は,その数年前にルイスやコッセルによって提出さ れた原子価論(ともに1916年)によって,原子価の概念の基礎がほぼ確立し, 化学結合における電子の役割が注目されていた時期でした.  その意味で本書は,訳者の序文(上記URL参照)にあるように,“動的な (Dynamical)”原子論ではなく “静的な(Statical)”原子論であり,また 当時大いに発展しつつあった量子力学にはほとんど触れていませんが,当時の 読者が化学的な知識を整理するのに役立ったものと思われます.  なお巻末には,「著者の人と為りを偲ぶ消息が大部ある」ことから,1922年 に行われたトムソンに対するフランクリン・メダル授与式においてのエームス 博士(J. S. Ames)の講演が訳出されています.   https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1928thomson-denshi/append.pdf [脚注]  *1 著者名の書籍表示は,当時の“読み方”でしょうか,「ゼ・ゼ・トムソ    ン」となっています.    https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1928thomson-denshi/tobira.pdf  *2 書籍に掲載された目次は,各章内の内容を抜粋した形での表記のため,    参考まで,本文中から抜き出した見出を下記に掲載しておきます.    https://www.shokabo.co.jp/oldbooks/1928thomson-denshi/mokuji2.pdf ◆『化學と電子』   ゼ・ゼ・トムソン 著/北岡 馨・菅沼忠大 共訳/柴田雄次 校閲/   菊判/182頁/昭和3年(1928年)10月発行/裳華房   原著:Sir J. J. Thomson, O.M., F.R.S.(1923)“The Electron in   Chemistry: Being Five Lectures Delivered at the Franklin Institute,   Philadelphia”,The Franklin Institute ※記述の誤りなど,お気づきの点がありましたら m-list@shokabo.co.jp まで  御連絡ください. ───【裳華房のお役立ちサイト】─────────────────── ◎ 2012年 研究所等の一般公開(9/26 更新) https://www.shokabo.co.jp/keyword/openday.html ◎ 2012年 学会主催 一般講演会・公開シンポジウム(9/26 更新) https://www.shokabo.co.jp/keyword/openlecture.html ◎ 2012年 若手 春・夏・秋・冬の学校(9/19 更新) https://www.shokabo.co.jp/keyword/wakateschool.html ─────────────────────────────────── ★★★★★★ 裳華房 売上げランキング(2012年7〜8月) ★★★★★★★★ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  分野別の直近2か月の売上げランキングです(2分野ごとを隔月に掲載). なお,採用品としての注文分は除いています. 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ★ 物理学分野 ★ 1.『大学演習 熱学・統計力学(修訂版)』 久保亮五 編  https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-8032-8.htm 2.『テキストシリーズ 量子力学』 小形正男 著  https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-2229-8.htm 3. 『物理学(三訂版)』 小出昭一郎 著  https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-2074-4.htm 4. 『テキストシリーズ 振動・波動』 小形正男 著  https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-2088-1.htm 5.『基礎物理学選書5A 量子力学(T)(改訂版)』 小出昭一郎 著    https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-2132-1.htm ★ 生物学分野 ★ 1.『新・生命科学シリーズ 動物の系統分類と進化』 藤田敏彦 著  https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5842-6.htm 2. 『新・生命科学シリーズ 植物の系統と進化』 伊藤元己 著  https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5852-5.htm 3. 『初歩からの集団遺伝学』 安田徳一 著  https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5215-8.htm 4. 『新・生命科学シリーズ 植物の成長』 西谷和彦 著  https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5845-7.htm 5. 『エントロピーから読み解く 生物学』 佐藤直樹 著  https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-5853-2.htm  次号では,数学分野,化学分野を掲載する予定です. ───【裳華房のお役立ちサイト】─────────────────── ◎ 自然科学系の雑誌一覧 −最新号の特集等タイトルとリンク− https://www.shokabo.co.jp/magazine/  ◎ 大学・研究所・学協会の住所録とリンク https://www.shokabo.co.jp/address.html ───────────────────────────────────  次号は,10月30日の配信予定です.どうぞお楽しみに! \\(^o^)// ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ★ Shokabo-Newsの配信停止・アドレス変更は下記URLよりお願いします ★ https://www.shokabo.co.jp/m_list/m_list.html メールマガジンのご意見・ご感想は m-list@shokabo.co.jp まで. ─────────────────────────────────── 自然科学書出版 (株)裳華房 〒102-0081 東京都千代田区四番町8-1 Tel:03-3262-9166 Fax:03-3262-9130 電子メール:info@shokabo.co.jp URL:https://www.shokabo.co.jp/  Twitterアカウント:@shokabo 【個人情報の取り扱い】 https://www.shokabo.co.jp/policy.html ─────────────────────────────────── Copyright(c) 裳華房,2012      無断転載を禁じます.



         

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